複雑な装置を必要としないプラズマの計測法として、発光分光計測に注目しています。ただ、取得できる分光データを正しく解釈するには、発光の源となる励起状態原子分子の生成消滅を正しく理解する必要があり、原子分子過程に基づいたモデリングが不可欠となります。このモデル化を通じて、産業応用にも適した、新たな発光分光計測の開発研究に取り組んでいます。
最近は、プロセス用にも多用されるアルゴンプラズマの発光分光計測について、取り組んでいます。
アルゴンを母ガスとし反応性気体を混入させ放電プラズマを生成すると、反応性ラジカル・励起種・イオン等が、
プラズマ中に安定に生成されます。永きにわたり、半導体プロセスや材料表面処理などに応用されています。
多くの研究者・技術者のかたが利用されていることでしょう。
ただ、このアルゴンベースプラズマは非平衡なので、プラズマの基本パラメーターである
電子温度や電子密度を、正しく計測するのは大変面倒なことです。減圧のプロセスプラズマの場合、
コロナ平衡やその変形バージョンで、分光データが解釈されることが多かったようです。しかし、
励起状態の生成消滅について、正確を期するには、衝突輻射モデルを用いる必要があります。
特に、大気圧の非平衡プラズマの場合、単純なコロナ平衡では解釈は困難です。
励起状態の消滅は、輻射遷移ではなく、気体分子との衝突脱励起によるのが
支配的だからです。この10年くらいで、大気圧非平衡プラズマは、材料、環境、農業、薬学、生物など様々に
応用されるようになってきました。とくに医療応用の研究が強力に推進されております。
その結果、大気圧非平衡プラズマの簡便な発光分光計測法の研究開発が、
非常に強く求められていると、感じます。
そのような背景もあり、大気圧非平衡プラズマの発光分光計測法の研究開発に、一生懸命取り組んでおります。
この研究が注目され、以下のようなシンポジウムでの招待講演や、解説記事、レビュー論文を書く機会をいただきました。
プラズマ発光分光計測のこれまでとこれから (2018電気学会全国大会S2-2)
高圧力非平衡プラズマ中電子密度・温度算出のための発光スペクトル解析
(応用物理 2018年11月号; 応物会員のページです)
Optical Emission Spectroscopic (OES) analysis for diagnostics of electron density and temperature in non-equilibrium argon plasma based on collisional-radiative model (Open Access = 無料です、是非ご覧ください。)
プラズマコミュニティの皆さん、発光分光計測に関連して、何でもできるという訳では有りませんが、お力になれることがあるかもしれません。なにか有りましたらご連絡下さい。