雑感~ご挨拶に代えて~


プラズマ理工学の研究を進めている赤塚と申します。

3年前と変わらず、自分の研究を地味に進め、地味に基礎分野の講義もしながら、プラズマ関連の異なる学会の橋渡し役が務められれば、などと、考えております。

プラズマ理工学の分野に入った最初の頃(1993年頃)は、物理学会をベースに、希ガスや水素のプラズマ実験を行い、基礎的なプラズマ分光研究を地味に進めていましたが、物理学会では「分光」に関しても核融合に直接関連する研究や、宇宙現象など、高温プラズマ関連の研究が多く、「身近なプラズマにも、基礎分野のテーマは有るのになぁ…」と思い始めていました。

1990年代後半になり、少し研究の幅を広げたいと思って、身近な酸素や窒素のプラズマ分光を討論しようとすると、物理学会では余り相手にしてもらえない感がしました。そこで、反応性プラズマに求心力のある応用物理学会に参加し始めたところ、かなり手応えの有る討論ができて、自分の不勉強が理解でき、研究も進みました。その結果、産総研の太陽光発電研究センターや、アドテックプラズマテクノロジー社との共同研究にも、声をかけて頂き、産業界や大学外の国立研究機関の方々とも、研究のみならずその後の研究展開などにつき意見の交換ができました。

最近では、ある事情から、電気学会にも入会してしまい、こちらでも窒素・酸素などのプラズマでは更に少し違う観点から、実りある議論ができ、大変有意義に感じています。応用系の学会でも、基礎をベースに進めた研究は、正当に評価されています。応用系学会でも基礎的な立場から学ぶべきことはたくさん有り、これらの成果を物理学会で発表すると、最近では、物理学会の方からも「面白い」という感想が聞かれるようになってきました。15年ほど前には、考えられなかった反応です。我が国のプラズマ研究のコミュニティが、少し高い段階に成熟したのだと感じています。

そのような経験から、次の様に思うようになりました.すなわち、種々の研究集団がそれぞれの背景によって異なる集団に所属して、交流の乏しかったプラズマ研究の個々の世界に、それぞれを横断する共通基盤を広め合い、交流を盛んにするお手伝いをしたいということです。私としては、以下のようなプラズマ関連の各種学術団体の幹事や世話人、編集委員などの役を務める事で、その想いを実現すべく努力して来たつもりです。多忙ではありますが、それなりに充実していると感じております。例えば、以下のようなお手伝いをしましたし、しています。(これで全部ではありません。)

◎ 2021/02-2023/01 応用物理学会 代議員
◎ 2019/04-2021/03 応用物理学会 機関誌 「応用物理」編集委員
◎ 2018/04-2020/03 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会 副幹事長
◎ 2017/04-2018/03 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会 幹事
◎ 2017/04-2019/03 電気学会東京支部 協議員
◎ 2010/12-2018/11 プラズマ・核融合学会 英文誌 PFR 常務エディター
◎ 2012/04-2015/03 電気学会プラズマ技術委員会 委員長
◎ 2012/01-2012/12, IEEE Japan Council, Chapter Nuclear and Plasma Society (NPS-05), Chair
◎ 2008/11-2013/07, 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 共同研究専門委員会委員
◎ 2011/01-2011/12, IEEE Japan Council, Chapter Nuclear and Plasma Science Society (NPS05) Vice-Chair
◎ 2011/04-2012/03, 電気学会プラズマ技術委員会 副委員長
◎ 2010/01-2011/12, IEEE Japan Council, Chapter Nuclear and Plasma Science Society (NPS05) Treasurer
◎ 2010/04-2011/03, 電気学会プラズマ技術委員会 幹事
◎ 2009/04-2010/03, 電気学会プラズマ技術委員会 幹事補
◎ 2007/04-2009/03, 電気学会 基礎・材料・共通部門 部門誌 編修委員会委員
◎ 2006/05-2009/04, 日本物理学会 領域2 役員
◎ 2002/04-2004/03, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会 幹事
◎ 1997/07-1999/06, プラズマ・核融合学会 編集委員、広告委員

それで、その後、応用関係のプラズマ計測研究が進み、論文業績も上がったことが 目に留まったのか、本学のオープンイノベーション機構 (OI機構) 様のご尽力により、株式会社アルバック 様と共に、 学内に 「アルバック先進技術協働研究拠点」を形成することとなり、 その拠点長を拝命することとなりました。 半導体製造装置を中心とした、真空装置の高性能化に関する研究に、私が長く取り組んできたプラズマ測定技術と、 AI技術を融合させ、これまで計測できなかったプラズマの状態を計測することにより、まずプラズマプロセス装置の高性能化を目指します。 ご期待ください。

いろいろなことがあり、私も年齢を重ねましたが、これからも変わらず、7年前の抱負を実現していきたいと思っております。すなわち上記の様に、プラズマ分野の学問を横断する共通基盤を広め合い、交流を盛んにするお手伝いをしつつ、自らは今後も地味にプラズマ分光学を中心とするプラズマ理工学の基礎研究に邁進したいと考えております。皆様からの一層のご指導ご鞭撻を宜しくお願いいたします。 

2021年10月27日 少し追記